世界で最古の下水道はインダス川のまわりにさかえた古代インダス文明の都市 “モヘンジョ・ダロ“ で発見されています。
この下水道はレンガでできており、各戸で排水された水を集め、川に流す役目をしていました。
古代ローマなどでも下水道が作られます。
共和制ローマの支配下にあったトルコ西部の古代都市エフェソス(ポンペイと称される)遺跡では、公共トイレが見つかっています。
紀元前にして、既に水洗トイレ仕様になっており、便座直下2mに排水路がありました。
産業革命の頃(明治頃)、ヨーロッパ都市部では人口増加と共に汚物が道端に投棄されるようになります。
そして次第に衛生状態は悪化し、コレラやペスト等の伝染病が流行しました。
その後、パリで環状大下水道ができてからドイツ、アメリカ、イギリスでも下水道が発達し、1914年には活性汚泥法
(微生物を用いた下水の近代的処理方法)の最初の処理場がイギリスにできたとされています。
日本の下水
縄文時代では、用を足すと土に穴を掘って埋めたり、川で直接用を足していたようです。
河や湖に橋を架けて用を足す構造を桟橋水洗式トイレといいます。
川の微生物等に分解してもらい、自然と環境を整えていました。
下水道と似た構造の遺跡が見つかったのは、弥生時代です。
排泄処理のための下水設備を考案し始めたのはこの頃とされています。
奈良時代になると、都では糞尿の水洗処理が行われていたようで排水路が平城京の町中に張り巡らされていたことがわかっています。
(下水処理場は無く、糞尿をただ排水する設備であったとされています。)
安土桃山時代に入ると現在の大阪で豊臣秀吉により、大阪城が築城され、同時に下水道が作られました。
それが「太閤下水」と呼ばれる大規模下水で、江戸時代にも整備や拡張工事が成され、現在も改修を重ねて利用され続けています。
明治時代に入ると文明開化と共に都市部での人口増加が目立ち、汚水排出量も増加し、大雨が降ると汚水が溜まるようになっていきました。
これが原因でコレラなどの伝染病が流行り、下水処理問題が深刻化し始めます。
こういった問題を解決すべく1884年、東京の神田に汚水排除も含めた近代下水道(初のヨーロッパ式下水道)が作られたのです。
それが「神田下水」※です。
※レンガ造りの大規模な下水道で、現在も使用され続けています。
大正時代に突入した1922年には、東京の三河島処理場運転が開始されました。
日本で最初の下水処理場で、散水ろ床法(ろ過材表面に形成された生物膜と接触反応させる固定床による処理法)が採用されていました。
1930年、昭和に入ると間もなく日本初の活性汚泥法による処理(微生物を用いた下水の近代的処理方法)が名古屋にて開始されました。
下水管のルーツ
紀元前2500年頃から土管が使われていたとされており、世界各地の古代遺跡からは様々なパイプやバルブが出土しています。
日本でも古いものでは飛鳥時代に、寺の中の雨水等を外に出す為の排水管として使用していたと推測される土管が出土しています。
江戸時代では竹を利用して作られた管が排水用として使用されていた事がわかっています。
ヨーロッパでは陶管、石管、銅管、鉛管、鋳鉄管が先駆的に発明され、そして現在世界で多く利用されている鋼管、コンクリート管、
樹脂管といった種類が国内に流入し、使用されていくようになっていきます。
排水管は、明治初期には手作り鉛管、銅管を用いていましたが、鉛管は特に高価だったことから徐々に鋳鉄管に代替されました。
腐食に強いことから、陶管も多く使われるようになり、横浜外国人居留地の下水道用に最初の国産陶管が使われました。
1872年、英国からの輸入品を参考に製造したものが初めての規格品であり、初めて近代的な真焼土管の製造と量産が成されたと言われています。
しかし、陶管は地震などで破損してしまうという難点があり、より強固なものとしてレンガが採用されるようになっていったのです。(1884年に築造された東京「神田下水」もレンガ作り)
日本では近代技術のほとんどが欧米からもたらされたものではありますが、初めて国内で鋼管が作られたのは1905(明治38)年のことで、艦艇装備用のものでした。
こうして1912年以降は国産鋼管の製造が始まり、第1次世界大戦で輸入品が途絶えたことで、国産品の代替が急速に進みました。
排水管とは
排水管とは、建物内及び敷地内において汚水、雑排水、雨水等をそれぞれ単独に排水する、もしくは合流して排水させる為の管をいいます。
その後公共桝(ます)を通過して、公共桝と下水道本管をつなぐ取付管を通り、コンクリート製の下水道本管へと流れていきます。
※「下水管」は一般的に自治体が管理している部分(主に下水道本管)を指しますが、個人が管理する排水設備の「排水管」までを含めて「下水管」とする場合もあります。
排水管の種類
排水管は塩ビ管と鋼管に分かれます。
配管用炭素鋼鋼管
歴史の古い配管材で、「白ガス管、黒ガス管、SGP、鉄管」などと呼ばれています。
雑排水管(台所・浴室・洗面・洗濯からの排水)や通気管を中心に昔から多く利用されてきました。
鋼管の内外面ともに亜鉛メッキが施されているだけなので、全面的な腐食が生じてしまいます。
ドレネージ継手による「ねじ接合」の場合の接合部分は、ねじ切り加工により元々半分程度の肉厚しかないので、腐食減肉による漏水が生じやすくなります。
硬質ポリ塩化ビニル管
広範囲の耐薬品性に優れており、酸性土壌による腐食がありません。汚水の中の酸・アルカリにも影響を受けず、硫化せず、耐食性に優れています。
排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管
塩ビ管の内観に鋼管の外観をとりつけ、鋼管の耐熱性と塩ビ管の耐食性を兼ね備えたものをいいます。
汚水と雑排水
排水管には汚水と雑排水があります。トイレからの排水を「汚水」、台所、風呂、洗濯などからの排水が「雑排水」となります。
これらの排水はそれぞれ、水質や混合物が異なる為、各排水箇所によって使用される配管の質や口径、長さ、設置の傾きなどにも違いがあります。
排水管をきれいに保つためには
排水管の耐久年数は素材によって少し変わりますが、亜鉛メッキ鋼管は約20年、炭素鋼鋼管は20~25年、塩化ビニル管は約30年、鋳鉄管は35~40年とされています。
マンション等の集合住宅では特に、24時間365日、何百世帯もの利用者によって生活排水が排出されており、排水管は休む事なく耐久し続けています。
こういったマンションやビルの排水管も、業者による定期清掃を行う事で、詰りや悪臭の対策ができます。
また、定期的に排水管内を、内視鏡等でしっかり調査する事で漏水に繋がる管の劣化を早急に発見できるというメリットもあり、また、必要であれば排水桝も適切に修繕してもらえます。
業者の高圧洗浄が定期的に行われ、適切な更生工事が施された排水管は長持ちします。そして建物自体に付加価値を与えます。
コレラやペストの流行など、様々な問題を経て、日本も何度となく下水処理に悩まされてきました。
最近ではオリンピック会場の一箇所である東京湾の異臭問題がとりあげられています。
オープンウォータースイミングの会場について、フォックススポーツ・オーストラリアのスポーツ記事では
「排泄物のなかで泳ぐ:オリンピック会場で下水漏れの恐れ」という見出しで水質汚染と悪臭問題について大きく報じられました。
東京湾の水質は非常に懸念されており、大腸菌の濃度レベルが上昇しているというのです。
お台場海浜公園は、綺麗な人工ビーチがありますが、大雨が降ると、大量に未処理の下水道排水がここへ流れこみ、強烈なトイレ臭を放つのが現状のようです。
「水の豊な国」「衛生大国」等といわれてきた我が国は、安心・安全な都市環境を誇り、今回再びオリンピック会場として選定されました。
しかし、今一度、日本国内で下水処理において問題が浮上しています。
下水道は合流式と分流式があり、東京23区の下水道はほとんどが合流式です。
合流式とは、生活排水と雨水を1本の下水管に合流させ、下水処理施設で浄化した後、河川に流す方法となります。
しかし豪雨により、大量の雨水がいっきに下水管に入った場合、下水処理施設の処理能力を超えてしまい、汚水が処理されないまま川へ流れてしまうのが現状です。
このように汚れた川の水が東京湾へと流れ込むのです。中には分解しきれていないトイレットペーパーが泡のように浮遊していたという記事もありました。
大腸菌の流入抑制を期待して水中スクリーン設置も成され、抑止効果もあることが報告されていましたが、根本的な問題解決に至るまではまだ時間を要するのかもしれません。
日本も戦後の高度成長を遂げた後、多くの人口が密接して生活するマンションやビル等も増加し、世界からの訪問者も増加しました。
たくさんの生活排水や工業排水が下水処理しきれない場合、汚水が川や海に溢れて流れ込んでしまう事はなかなかすぐに解決する問題ではありませんが、
ひとりひとりのくらしの場における排水問題が大きな環境問題へと繋がっているのかもしれません。
排水設備が破損したり不具合を起こすと厄介です。
人にも寿命がある様に、排水設備にも寿命はあります。日々生活しているかぎりでは、なかなか排水設備の重要性や劣化部分は認識し難いものですが、
不具合が生じて汚物や異臭が流出してからでは後処理が大変です。
それぞれの敷地にある排水設備をキレイに保つ事は、全体の衛生環境を保つ為のワンステップになるのではないでしょうか。
タイコーは排水設備の点検や適切な工事を行って、少しでも環境汚染を防ぎ、快適で衛生的な住環境を築いていけるよう、これからも安心と確かな技術のご提供を志します。
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