「水」、それは地球における生命の源です。
そして私たちは水を様々な用途で毎日利用しています。
飲用、洗濯用、調理用、排泄用、掃除用などです。
現代の日本はどこに赴いても水道が引かれている環境が全体的に整っており、すぐに新鮮な水を手に入れる事ができますが、
では、衛生的にすぐ飲用できる水が日本の生活様式の一部として当たりまえに供給できるようになったのはいつからなのでしょうか。
今回は給水の歴史についてご紹介していきます。
4つの文明を発展させた川
文明は川の近くで発展しました。
河川流域では人々が肥沃な農耕地帯を築いたり、漁業や狩猟も盛んで生命を育み、文字や天文学を操り、今でも利用している暦等を作り出してきました。
近年様々な文明が発掘され、あまり言われなくなりましたが、下記の「世界四大文明」といわれた文明がよい例です。
メソポタミア文明
トルコ、シリア、イラクを流れてペルシャ湾に注ぐティグリス・ユーフラテス川
エジプト文明
アフリカ東部を北流する世界最長の川、ナイル川
インダス文明
ヒマラヤ山脈を水源としてパキスタンとインドの間を流れるインダス川
中国文明
中国大陸を流れる黄河、長江
川の近くでは土が養分を多くふくみ、作物を育てるのに適していましたし、人も動物も豊かに育まれてきました。
こういった便利な川から少し離れた暮らしの場に水を引こうと考えられた事が給水の仕組みを作り始めたきっかけでした。
紀元前28世紀頃にはエジプト王朝で給水用として銅管が使用されていたようです。
また、本格的な水道管は紀元前312年古代ローマで作られたアッピア水道です。
当時、木管や鉛管、石管が使用されていました。
次の写真はアッピア街道州立公園の一部で、水道橋公園(パルコ・デッリ・アックエドッティ)にあるローマ水道です。
ローマ水道とは、紀元前312年~3世紀にかけて古代ローマで住民に水を配給する為に建設された水道です。
現存するものでは、現在のイスラエル、エルサレムにあるもので、紀元前701年、アッシリアの攻撃に備える為に作られた
水道トンネル(ヒゼキアのトンネル)が最古のものといわれており、今も豊かな湧き水を運んでいます。
日本だと最古のものは室町時代後期に作られた、小田原早川上水とされ、小田原城の下に水を引き込む為に作られたとされています。
主に飲用として、炭等でろ過して使用されていました。
現在も利用され続けている最古のものだと1664年(寛文3年)に作られた熊本県宇土市の轟泉水道です。
当時は漏水防止にシュロの皮で巻かれ、漆喰を接合材として使用した土管が起用されており、藩士の各家まで飲用水が引かれていました。
その後100年ほど経過した頃、劣化が激しくなり、全て石に取り換える工事が成されました。
コの字型にくり抜いた石に、板状の石を被せ、継ぎ目にガンゼキという接着剤で接合したものでした。
現在も生活用水道として100戸程の家庭で利用されており、世界名水百選にも選定されています。
少し時代は遡りますが1590年には、徳川家康の命によって、小石川上水が開かれ、その後発展・拡張したのが神田上水とされています。
この水源は湧き水で、取水口までは自然の河川を利用して、神田・日本橋・京橋あたりで利用されていました。
取水後は地中配管で江戸中に配水していたようです。
石桶や木桶等が使われ、この当時、水量や濁度をチェックする水見桝も存在しており、飲用の他に灌漑用水としても利用されていました。
自然流下により配水される水は水道管をつなぐ桝で方向等を調整させ、汲み上げる為の桝(上水井戸)へ配水し、人々はそこから汲み上げて各戸に持ち帰るというような形式です。
1903年(明治36年)には廃止されており、現在は神田川の一部となっています。
1654年、さらに人口が増すと玉川上水が開通します。
「江戸の六上水」(神田上水・玉川上水・本所上水(亀有上水ともいう)・青山上水・三田上水・千川上水)と呼ばれた上水道は、
こうして次々と開かれていきました。そしてちょうどこの頃、水道利用料金の徴収が始まったとされています。
近代水道
■世界の近代水道
ヨーロッパでは産業革命による都市部の人口増加がみられ、これに伴う様にコレラや腸チフス等が流行しました。
そして都市の劣悪な衛生環境の改善を図る為に1820年、イギリスで標準的な水処理方法の緩速砂ろ過法※が導入され、鋳鉄管の普及も徐々に進みました。
※微生物で形成する「ろ過膜」といわれる粘質状物質の働きによって水を浄化する方式で、広大な用地を必要とします。
1847年には水道事業項法で、常時給水・水量確保・適正水圧・汚染防止・消火栓設置の義務化、水道料金制度の明確化が制度化されました。
■日本の近代水道
日本でも明治に入ると開国とともにコレラが流行した事で、安全な水の供給目的等の為、次々に近代水道が整備されていきました。
1887年に英国式の近代水道が最初に導入されたのは「横浜水道」です。
相模川上流を水源として、ろ過した水を消毒後、鋳鉄管で市内に配水するという方法です。
こうして1889年には函館、1891年には長崎と、港湾都市を中心に、近代水道の導入は横浜水道に続いて次々と行われていきました。
また、水道料金を支払う事への民衆からの反感もありながら、近代水道による利便性は向上し、消防効果も非常に高いという事で徐々に現代の水道の仕組みへとシフトしていきます。
「水を汲む」という感覚から「水が流れ出る」という感覚へと変化させた英国式水道技術は第二次世界大戦までの間、本流となります。
そして戦後復興と共に水道整備も繰り返され、徐々に国民全体が水道を利用するようになっていきます。
水の安全と衛生問題
日本では、明治に流行したコレラ等の対策としても水道設備を近代化させてきました。
戦後は高度経済成長と共に工業用水や家庭用水等の汚染も問題視されるようになっていきます。
元来、日本食とは玄米や白米と一汁一菜、時に魚や鶏肉といった食生活だったので、脂で汚れた食器洗いをどうするかなどといった概念もほぼなく、
灰と藁を利用して洗うと灰のアルカリ性による油分分解ができたので、それで充分洗い物の用を成していました。
しかし洋食が取り入れられていくとバターや肉等を調理する機会も増え、脂ののった食器を洗う為の洗剤を大量に使用するようになっていきます。
界面活性剤の入った食器洗剤が広まり、また、衣服の汚れ落としに抜群の洗濯洗剤等も使用され、汚染原因の一つとなりました。もちろん江戸時代等、現代の様な洗剤は
ありませんでしたが、現代では漂白剤等、頑固な汚れも落とす強力な洗剤が大量に使用される毎日です。
そして第二次大戦後、日本の高度経済成長期である1956年に熊本県水俣市で、四大公害病の一つである水俣病が確認されます。
水俣病は工業災害における犠牲者の多さでも知られています。その他にも公害病の報告が相次ぎ、大きな社会問題に発展するようになりました。
日本における水の衛生管理
そもそも、日本で水の塩素消毒が始まったのは大正時代からとされていますが、戦後はGHQ公衆衛生福祉局により、
水の消毒の為に塩素を常時注入する事となり、元来の日本の水にも変化が起きます。
古代から引き継がれた毒味のない軟水が、常時塩素消毒をする事により、トリハロメタン含有等の問題を挙げるようになっていきます。
トリハロメタンとは、中枢機能低下、肝機能や腎機能への影響のほか、発ガン性や催奇形性についても指摘されており、非常に危険な成分です。
1952年を迎えると、サンフランシスコ講和条約の発効により、日本は独立しましたが、水道法における塩素消毒義務が残されました。
しかし、1970年代に、水中の有機物質と塩素が反応すると発がん性物質であるトリハロメタンが生成されることが海外で判明し、
水質基準による規制とともに塩素注入率の低減が促され、1981年、厚生省より総トリハロメタン濃度として年間平均値の規定が指示されました。
水質の良い状態を保つ為には給水管も様々な種類が利用されてきました。
ここで給水管の種類をいくつか挙げてみます。
給水・給湯管の種類
水道用亜鉛メッキ鋼管 (SGP)
昭和後期に使用された配管で、管内に錆瘤ができやすく、錆びた赤水も出やすく、錆びにはバクテリアが発生する事もあります。
管内は閉塞しやすく、錆びた水は身体に悪いという事で好ましくありませんでした。
水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(VLP)
鋼管の内面に硬質ポリ塩化ビニルをライニングした水道用のライニング鋼管です。
内面は硬質ポリ塩化ビニル管であり、耐食性、耐薬品性に優れています。
内面は平滑な硬質塩化ビニル管で、摩擦抵抗が小さく、スケール等の付着がほとんどありませんので流量への影響が少なくてすみます。
常温(40°C以下)の給水配管用で、水道用以外の利用は推奨されていません。
水道用耐震性ポリエチレン管(PE)
軽量なため取り扱いやすく、ポリエチレン管のため腐食の心配がありません。
柔軟性があり、耐久性・耐震性に優れています。
水道用硬質塩化ビニル管(VP)
鉄管と違い、抵抗が少ないため流量が多く、腐食に強いため、給排水用の管として広く用いられています。
正式名称は「硬質ポリ塩化ビニル管」で、通称「塩ビパイプ」、「塩ビ管」と呼ばれています。
水道用架橋ポリエチレン管(XPEP)
屋内の給水給湯配管工事で使用されている、いわゆる樹脂管です。施工性の良さと漏水リスクが低く、切って差し込むだけの簡単さで、柔軟性、耐熱性、
耐食性にも優れているので、給水管にも給湯管にも使用することができます。
ポリブテン管(PBP)
水道用架橋ポリエチレン管より性能が落ちる部分もありつつ、非常によく似た特徴で、材質が柔らかく、少々コストが安いという利点があります。
銅管
銅管は、衛生的で耐食性にすぐれた、給湯用に適した配管材です。
銅管は築20~40年前後のマンション給湯管に多く使用されています。
加工と熱処理によって自由に機械的性質を変えられる銅管は多くが、はんだで接合されます。
そして銅自体の抗菌作用により、あらゆる菌、ウイルスを死滅させる効果があります。
管内面の銅が酸化することで「緑青」と呼ばれる青緑色の生成物が発生し、
管内部に保護膜を作り、腐食を防ぐ効果や抗菌力もあるとされていますが、
発生状況によっては給湯水栓から青緑色のお湯が出てしまう事もあります。
こういった事を改善する為に管内を抗菌塗料でコーティングする事で古くなった給湯管も延命する事ができる工法があります。
また、銅管を利用した給湯管の場合、従来の樹脂ライニング材では、銅管が本来持っている銅イオンの抗菌効果が失われてしまいますが、
ライニング材に独自開発の抗菌塗料を採用したHSC工法では、銀イオン効果で高い抗菌性能を維持し、配管内部に付着する汚れを抑制する事が可能です。
通常工事よりコストが半減し、10年漏水保証もついて安心・安全・衛生的な工法です。
いかがでしたでしょうか。
「安全で衛生的なおいしい水」を得る為には建物の給水・給湯管はとても重要です。
これを機に、ご利用の給水・給湯管も確認していただければと思います。
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