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建築用語の『スラブ』って何のこと?

みなさんは『スラブ』という言葉をご存知でしょうか?

あまり馴染みのない言葉かも知れませんが、リフォームを検討されている方などは聞いたことがあるかもしれません。 今回は、そんなスラブの意味や役割、種類についてご紹介していきます。

スラブとは?

スラブとは、鉄筋コンクリートで作られた床材や屋根材の事です。元々は『平板』『石板』を意味する言葉で、基本的に凹凸がない平らな板のような形状をしています。

床を指す時には『床スラブ』、屋根を指す時には『屋根スラブ』と言います。

スラブは一般的にコンクリートで出来ており、強度を保つために鉄筋が格子状に埋め込まれています。木造と比べて騒音や歪みに強いと言われており、その特性からマンションやビル・学校など様々な施設でスラブが多く用いられています。

スラブの特徴

ここからはスラブの様々な特徴をご紹介していきます。

高い遮音性

スラブの特徴として、高い遮音性が挙げられます。

音は振動により伝わりますが、スラブは振動にしにくい性質のため、遮音性が高くなります。マンションのような集合住宅では、生活音によるトラブルも発生していますが、スラブは騒音対策としても効果的です。上階から下階へ伝わる生活音には、『 軽量衝撃音 』『 重量衝撃音 』の2種類があります。

軽量衝撃音とは食器やおもちゃなど軽いものを床に落としたりスリッパで歩いた時などの音で、重量衝撃音とは椅子や机などの家具を動かしたり人が飛び跳ねたときに発生する音です。こうした生活音のうち、トラブルの原因とされている音は重量衝撃音ですが、構造床の素材をスラブにすることによって音を軽減する事が出来ます。

重量衝撃音の伝わりやすさにはスラブの厚さが関係しており、スラブの厚みが厚いほど、遮音性が高くなる傾向にあります。

一般的なマンションの場合、スラブの厚さは200㎜以上に設定されています。それ以上薄いと効果も薄くなり、厚すぎるとコストがかかりすぎるため、適切な厚さにすることが大切です。一方、軽量衝撃音の伝わりやすさは、床材が影響しています。スラブの上に遮音性が高い床材を施すことによって、軽量衝撃音を軽減する事が出来ます。 騒音トラブルの原因とされる重量衝撃音を軽減したい場合は、構造床にスラブが使用された住宅がおすすめです。

振動や変形が少ない

スラブは格子状の鉄筋を入れてつくられているため、コンクリートの圧縮に強い性質と鉄筋の引張力に強い性質によって強度が高まり振動や歪みなどに強く変形しにくいという特徴があります。日本は地震が多い国のためスラブを使用することによって耐久性に優れた丈夫な建物をつくることが出来ます。

木造の耐用年数が22年なのに対して鉄筋コンクリート造は47年です。

それだけ木造と鉄筋コンクリート造の建物の資産価値が異なります。 ※あくまでも税法上の耐用年数であり、木造住宅が22年を超えると住めなくなるという事ではありません。

スラブの厚さ・耐荷重

スラブの厚さは建築基準法により、『80mm以上かつ、短辺方向における有効梁間長さの40分の1以上とすること』という規定があります。

遮音性や耐久性の観点から、現在では最低150mm程度が一般的とされており、分譲マンションや優良住宅では180~250mm程度になっています。先ほどもご紹介したようにスラブの厚さは、遮音性や住みやすさに関わる大切な要素となります。スラブの耐荷重は、住宅の場合は1㎡に対して180kgです。事務所や店舗などであれば1㎡に対して290kgです。

詳しく知りたい場合には、建物の構造計画書を確認すると記載があります。

スラブの種類

スラブには、様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここからはスラブの種類についてご紹介していきます。

構造スラブ
構造スラブは、梁や柱などに支えられているスラブです。
スラブ自体に荷重が加わるため、強度を高める必要がありコンクリートの中にはより強固な鉄筋を埋め込みます。
強度が高いため、地盤沈下の影響が少ないといわれており、耐震性も期待できます。
地盤が弱い場合でも採用できるスラブです。
二重スラブ
二重スラブとはその名の通り2つのスラブで構成されたもので、スラブの下にさらにスラブがある構造です。
スラブとスラブの間にスペースがあり、配管を通す事ができるので配管を露出させずに済み、見た目をすっきりさせる事が出来ます。この他にも開いているスペースを消火水槽や蓄熱槽などとして利用することもでき、火災や地震などの災害に備えられます。
また、二重スラブは、上下階に空間をつくれるため、軽量衝撃音が伝わりにくくなるというメリットがあります。
しかし、重量衝撃音に関しては、太鼓現象が起こる可能性があります。
太鼓現象とは、太鼓を叩いた時のように空間のなかで振動が広がり、音が増幅して上下左右に響くことをいいます。
太鼓現象は、密閉された空間により起こりやすいため、隙間を設けることにより対策する事ができます。
片持ちスラブ
片持ちスラブは、片側のみが壁に支持されている構造になっています。
はね出しスラブや持ち出しスラブとも呼ばれており、エントランスの雨除けやベランダ、窓の外のひさしなどによく用いられています。
壁に支持されていない側は、空中に浮いている状態のため、支持が弱い傾向にありますので、持ち出しの長さについては限度があります。持ち出し部分を2m以上とすることもできますが、たわみの原因になりますので注意が必要です。
片持ちスラブを用いる場合は、強度を保てるように計算して設計する必要があります。
フラットスラブ
フラットスラブは、梁がないスラブです。
梁がないことによって天井を高くしたり、大きな窓をつくることが出来、開放感のある空間をつくる事が出来ます。
また、スラブを補強するために支持部分を厚くしているので、上階の音が下階に伝わりにくいというメリットもあります。しかし、一般的にスラブは柱同士を梁でつなぐことにより、強度を維持していますが、フラットスラブは柱のみで支持しているため梁がない分耐久性が劣る可能性があります。
フラットスラブは、地震により衝撃が加わった際に、柱がスラブを貫通してしまうパンチング破壊が起こる恐れがあります。海外ではよく用いられている構造ですが、地震が多い日本でフラットスラブを採用する場合は、構造設計を慎重に行うことが大切です。

ここまでスラブの種類についてご紹介してきましたが、スラブと似ているため、混同されやすいものとして、土間コンクリートがあります。

ここからは土間コンクリートの特徴についてご紹介していきます。

土間コンクリートとは

土間コンクリートは、見た目がスラブと変わらないため、スラブの一種と間違われることが多くありますがスラブとは別物です。

スラブが弱い地盤の上に用いられることに対して、土間コンクリートは強い地盤の上に用いられています。土間コンクリートに加わる荷重は、下にある地盤が支える想定で設計されています。そのため、土間コンクリートはスラブ自体に荷重が加わる構造スラブと比較して、コンクリートに埋め込む鉄筋は軽微なもので十分です。ただし、土間コンクリート自体に強度がないため、地盤の影響を受けやすく、地盤沈下が起きた場合、土間コンクリートが荷重に耐えられず、ひび割れたり破損したりする恐れがあります。土間コンクリートを採用する場合は、地盤沈下によりひび割れや破損を防ぐために、地盤の締め固めが大切です。

ネットの記事などで、『土間スラブ』という用語をみかける事がありますが、これは誤った用語となります。

いかがでしたでしょうか?
今回はスラブの意味や役割、種類についてご紹介してきました。 種類によって特徴が異なる為、建物に応じた厚みや種類を選んでいく必要がある事がわかりました。お住まいの建物の構造が気になった方はこれを機に確認してみてはいかがでしょうか?また、マイホームの購入やリフォームを検討する際は、スラブという言葉を耳にする機会が多くありますので、これを機にスラブについて理解し、物件探しやリフォームに役立てていただければと思います。

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